大学生の鬱な日々

料理をしばしば作ります。時に国際政治 野菜栽培 どうかお手柔らかに

日本政府が韓国政府の元徴用工問題の対応に非があるとして対抗措置を講じたという報道に関して。

 結論から言うと私は100パーセント日本の対応に反対だ。

理由を述べる前に報道の中身を是正することから始めたい。まず"対抗措置"しばしば禁輸政策と報じられるが、それは間違いだ。今まで簡略化していた手続きを復活させるだけであって禁輸ではない。そこは勘違いしないでいただきたい点だ。禁輸ではなく"輸出規制"という言葉の方が正当だ。

さてさて何故私が反対するかというと理由を述べていこう。

 大きな私の主張は、自由経済を主張し続けてきた日本が今回の対応を行うことは完全に矛盾しているということだ。G20で「自由で公正、無差別的で透明、予見可能で安定した貿易環境となるよう努力し、開かれた市場を保っていく」と議長国の日本政府はまとめていたが、その面影はどこへ消えてしまったのだ。確かに徴用工を巡る韓国政府の対応には問題がある。それに対して日本が是正を促していくのは重要であり、またしなければならないことでもある。しかしその手段に輸出規制を使うのは甚だ疑問である。トランプ政権の制裁措置を用いて各国に圧力をかける外交戦略を見習ったとでもいうのか。現代のようなボーダレスでサプライチェーン(供給網)が世界全体に広がる中で輸出規制やら関税措置やらを用いるのは世界貿易・経済に多大なリスクを生む。G20では当に上記を再確認したはずだ。また日本が対抗措置を行ったところで、韓国が交渉の場に現れるかといったら一概にイエスとは言えない。むしろ通商協議の方が韓国政府が交渉に応じる可能性は高いはずだ。アメリカ対イランや対中国でそれら措置が功を奏すか否かはよくよく分かったはずだ。

この際対中が出たので述べておくと、米中貿易協議が再開したと言っても今までと変わらず平行線で終わると見るのが世間の目だ。何故なら両国に残された課題はほとんど全てが、中国の構造問題を根本から変えなければ解決しないものだからである。現時点では社会主義国が資本主義経済システムを採用した稀に見る国家を慣用的に受け入れるしか道は残っていないように見える。他組織を棚上げした二カ国での議論でなくWTOを介した協議になれば中国のシステム是正にも繋がるだろうが。しかしHUAWEIの禁輸措置を一部解禁したことは評価できよう。

しばしばWTO違反の可能性があるのでは? と報道されるがそれはどうだろうか?検討しよう。まず対象半導体材料三品目の包括的許可制の取りやめに関しては最恵国待遇違反の可能性が浮上する。韓国への煩雑な手続きを他国にも適用する必要がある、ということだ。今回のような非関税措置は国際社会においてしばしば使われる。例としてバナナの検査基準を厳しくし、事実上の輸出規制をかける ことが挙げられる。確かに最恵国待遇違反であるとの可能性は否定できない。しかしそれらに異議を唱えることは国内法とも絡んでくるので、国家の不干渉原則を侵害することになりかねない。その為WTO違反であると一概に言うのは困難であるとも言える。なんとも残念な限りだ。

次に八月をめどに適用される"ホワイト国からの除外"についてだ。

GATT21条安全保障上の重大な利益に反する場合において輸出制限をかけることを許可する という趣旨に今回の事例が該当するか否かということに議論は重きを置かれる。21条については安全保障という国家にとって死活的な関心を有する領域なため各加盟国に広範な裁量が与えられている。そのため21条違反であると言える可能性は低い。またここも勘違いされるところなのだがあくまで"ホワイト国"というものは国内管轄事項であるためホワイト国除外も自ずと国内管轄が及ぶ。そのためWTO法を適用して良いか?との疑問も浮かぶところだ。

 以上のように長々と述べたが私はWTO違反であるから直ちに撤回するべきだ、と述べているわけでなく、日本がこれまで標榜してきた"多角的な貿易主義"の精神に相いれない ことに甚だ疑問を抱くと感じている。EUと反保護主義を推し進める日本が道を逸れてしまったら抑えが効かなくなる。逆説的に考えると、これほど国際上の日本の影響力は多大なものになっている ともとれる。

 私は直ちに日本政府が今回の対応の再検討を求める。